誰かさん……もとい三枝くんはむっとした表情でこっちを見つめている。
「なんだよ、それ! さっきも同じやりとり見たし! 結局俺が悪者みたいじゃん!」
寂しそうな、悲しそうな、それでいてどこか悔しそうな。
三枝くんがそんな目をすると、私の決心も揺らいでしまう。
「ごめんね、三枝くん。やっぱり私、一緒に…」
『乗ろうか?』
そう言おうとして言いかけたとき。
逢坂くんが私の前に腕を出す。
まるでかばうかのように。
「だめだろ、紘。鳴海は優しいんだから、そんなこと言ったら決断出来なくなる」
子どもに言い聞かせるような口調で、三枝くんに諭す。
「鳴海も鳴海で、ちゃんと自分が思ったことを言えばいいんだからな?」



