3センチHERO


『では、素敵な空の旅へいってらっしゃーい!』


また女性のアナウンスが流れる。


と、同時に前の方で大きく手を振る女性を見つけた。


その手にマイクが握られていることから、あの人が話していたのだと気付く。


私も彼女に手を振り返すと、ガタンという音とともにジェットコースターが動き始めた。


「わっ」


突然の衝動に思わず声がもれる。


でも恐怖を感じている暇もなく、ジェットコースターはどんどん速度を増していく。


気付けばいつの間にかトンネルを抜け、もう最高地点。


ここを降れば、私にとって最大とも言える地獄のハイスピード。


目をつむってどうにか恐怖に耐えていると、逢坂くんがにこりと笑って、耳打ちをする。


「大丈夫だよ」


轟音だらけが鳴り響く中、それだけははっきりと聞き取れた。