『シートベルトを閉めてお待ちください。まもなく発車いたします』
軽快な女性のアナウンスが流れると、私はまたさらに恐怖の思いでいっぱいになる。
震える体、暗くなる表情。
それだけでも、2人から心配の目を向けられるには十分だった。
「大丈夫? 不安?」
「やっぱりやめとくか?」
私にはもったいないくらいの親切すぎる優しさに、逆に申し訳なくなってしまう。
「でも、大丈夫」
2人がいれば、なんだか頑張れるような気がするから。
「…じゃあ」
右隣の逢坂くんがぽつりとつぶやき、私の右手を握る。
「えっ…!」
突然のことに驚きを隠せないでいると、優しく笑って彼は言った。
「こうすれば、怖くないでしょ?」
手のひらから伝わる、逢坂くんの体温。
暖かくて、どこか安心する。
緊張も不安も、気付けばどこかに飛んでいた。



