3センチHERO


「それにしても、鳴海が喧嘩だなんて珍しいな。しかも相手は紘だし。あいつもあいつで根は優しいから、怒ったり、声を荒げたりすることなんて、めったにないんだよな。俺だって紘の怒鳴り声とか聞いたことねえもん」


「……うん」


うつむくとよく見える、地面の色。


黒っぽいその肌は、踏むたびに深みを増していく。


「ほんとすげえよ。あいつとそんなにやり合えるなんてさ」


「…冗談じゃなくて。私だって真剣なんだから」


「ははっ、ごめんごめん」


淡い空、通る風、香る木の葉。


その全てが私たちを包み込んでくれている、この時ばかりはそんな気がしていた。


「まあ、原因がなんだか分からないからなんとも言えないけどさ、そんなに落ち込まなくたっていいんじゃない?」