3センチHERO


「聞いてたんだね」


「…聞こえただけ」


はあ、とため息をこぼし、ドールハウスの方へと重たい足取りで向かう三枝くん。


こんなにもテンションが低い彼を見るのは初めてで、私もどうしていいかが分からない。


「行かない方がいい、かな?」


「それは俺が決めることじゃない。行きたければ、行けばいいだろ」


「でも…」


「………」


何も言わなくなってしまった。


私が行くことで、三枝くんが嫌な思いになるのなら、私は行きたくない。


せっかく、短い間だけど、こうして一緒に住んでいるのだから、お互い気まずいままだなんて、つまらない。


だけど、逢坂くんのことも裏切りたくないし。


一体どうすれば…。


「と、とりあえず…ご飯食べてくるね。三枝くんのも、ちゃんと持ってくるから」


「…うん、ありがと」


振り返らずに、部屋を後にした。


三枝くんが今どんな表情をしているのか、なんだか知りたくなくて。


声だけじゃ伝わらないものも、きっとあるはずだって、分かっているのに。


「はあ…」


階段を下りながら吐いたため息は、どこかへ行くこともなく、小さく消えた。