3センチHERO


「あれ、小春くんじゃん!」


サンドイッチを口に入れ終えたとき、私の後ろからそんな声が聞こえた。


三枝くんはとっさにカップの影に隠れる。


小春って呼んでたことは、逢坂くんの知り合い?


気になって振り返ると、いたのはクラスメートだった。


「あっ。香澄も、来てたのか」


香澄、と逢坂くんに呼ばれたその女子は、明るい笑顔を振りまきながら、私に有無を言わす暇もなく勝手に隣に座る。


見たところ1人のようだが、たった独りで遊園地へ訪れたのだろうか。


私のように友だちの少ないならまだしも、彼女……鈴村(スズムラ) 香澄さんは、教室でいつも友だちに囲まれているような人だ。


よほどの事情がない限り、遊園地にわざわざ1人で来るとは思えない。