思っていたよりも早く応接間に着いた。

多少 早歩きをしたのも事実だったが かなり広い施設内、先程まで居た部屋と此方では それなりの距離がある。

数分前行動ができている、という点で見ると 良かったと思う。

応接間の奥扉の先にある給仕の待機室で相野様方・オーナーに直ぐに紅茶が出せるよう用意を始めた。

それと同時並行に 用意されている切り花を生けた。

とは言っても そんなに たいそうなことはしていない。

応接間は毎日 掃除はされているから 目につくようなところに埃とかはなかったけれど、念のため 埃の溜まりやすい場所を軽く掃除した。

その後、生け花を飾った。

結構、順調に進んでいる気がする。

そこでオーナーが入ってこられた。

「アクア、もう準備はできたのか?」

「えぇ、今 不備がないか 確認をし終えたところです。」

「そうか……で、部屋の方はどうなっているんだ?」

「大方片付いています。」

"そうか" と呟いて 深く息を吐いた。

「そうだ、最近の調子はどうだ⁇」

「今日から初めての専属につくので」

話を遮られた。

「そうじゃない、プライベートの方。
修羅に聞いてるんだ。」

あぁ、そういうことか。
オーナーは俺の父親でもある。

血の繋がりはないけれど、本当によくしてもらってる。

「ぼちぼち⁇

あ、そうだ、進路のことで話がしたいから また時間作って欲しい。」

「分かった。今度 修羅が家に帰って来た時に話そう。」

執事役は組織から住む場所を提供されている。

施設に隣接して 建っている寮でほとんどの執事役は生活している。

俺は 早めに仕事を切り上げられた時以外はここで過ごしている。

遅い時間に疲れた身体で20分ほど電車に揺られて家に帰るのは 少し辛いものがあるから。

「俺だって 美夢とか藍都に会いたいから帰りたいんだけど、疲れ切っちゃうから……。」

美夢・藍都はお父さんの子供。
まだ小ちゃくて すごく可愛い。

見ているだけで癒される。

「お母さんも心配してるから もっと帰って来て欲しいんだけどな。」

「うん……、頑張るよ。」

「まぁ、修羅が健康でいてくれるなら それでいいんだけど。」

お父さんは伸びをした。

新しいお嬢様を迎えることで、ここ最近は会議が続いていたから きっと疲れているんだろう。