先生が来たのは その数分後。

俺がまだ 放心状態で居て、あの時 立ち上がったまま 少しも動けて居ない時だった。

「そうか。」

彼女が残していった黒板掃除の続きをする。

「そう言えば、霧島だけだぞ?
進路希望調査書の提出がまだなのは。」

「あっ、もう〆切過ぎてましたっけ⁇
まだ 親と話し合えてないので、待ってもらえますか⁇」

「〆切はまだだけど、いつも提出物はしっかりしてる霧島が 周りよりも遅れていることが気になってな。

まだ進路のことで悩んでいるのか?」

掃除の手が少し止まったような気もした。

けれど、直ぐに平静を取り戻した。

「まぁ、少しは。」

去年は文理選択でかなり悩んだ。

文理選択調査書の最終〆切日・完全下校時刻まで悩んだ。

その末に出した結果が正しいとも思えず、だからと言って 選ばなかったもう一方が良かったか、と言われると 何も答えられない。

「霧島は模試の結果もいいし、大学なんて選びたい放題だと思うけどな。」

「そんなことないです。」

「今 調査書に書く大学しか受けたらダメ、なんてことは誰も言わないから もっと気楽に考えていいと思う。

来年の今頃、こんな風じゃ困るけどな。」

"ハハー" と笑う先生。

確かに自分は ものを深刻に考え過ぎている節があるように思う。

けれど、進学ガイダンスとか何回も受けて来て 生半可な気持ちでは大学なんて行けないんだろうと思ってる。

自分が興味のあることを追求する、なんて。

本当に興味があることじゃないと不可能だと思う。

「〆切は守るので、もう少し待ってください。」

話している間に黒板掃除も終わった。

「教室の施錠は先生がしてくれますか⁇」

「あぁ。」

開いていた窓も全て閉めたし、日誌も先生に渡した。

「じゃあ、さよなら。」

「はい、さようなら。」

鞄を持って教室を出た。