白色から除く、色あせた水色。アルバムだってすぐにわかった。何度も何度も開いたんだろう。薄汚れたそれには、涙の後もほんのりと窺える。
ラックの扉をゆっくりと開く。
アルバムの横には、封の開いていない白い封筒が無造作に重ねられていた。
宛先は『金沢 翔太』。
送り主は——『桜川 南緒』、『川上 尋』。
〝ナオ〟と〝ジン〟だ。
二つ並んだ名前を見て、高校時代から現在までずっと、この二人は一緒にいるのだということが容易に想像できる。
見なきゃよかった、と。
そう思った時にはもう遅かった。
先生が家に帰ってこない理由がここにあった。
封の開いていない手紙。涙の跡が残る色あせたアルバム。この扉が開いていたのは、先生が何度もここを開けているからだろう。
見たくないと思いながら、何度もここを開いてしまうんだろう。
「———桜井?」
先生の声にビクリと肩が震えた。しゃがんでいるから、テレビの前にあるソファで私が見えていないんだろう。もちろん、開いていたこの扉のことも。
閉めて、鍵をかけて、ずっと心にしまい込んでいる、先生のその気持ちが、痛くて、痛くて、胸の奥が締め付けられる。
私じゃどうしようもできない。そんなことわかってるのに。さっき、先生に冷たい言葉を投げられたばかりなのに。
ねえ、それでもね、先生。
先生が言う「馬鹿」に、私はなりたいと思ってしまうよ。
何度も、何度も、何度だって、先生に寄り添いたいと思ってしまうよ。
いらないと言われたって、馬鹿だと言われたって、なんだっていい。
「……先生は、ずっと、17歳で止まってるんだ」