「ゴメン、泣かすつもりはなかったんだけど」

「っ……私が、っ、勝手に……泣いてる、だけだから……っ」



先生は、私の頭にあったかくて優しい手を乗せて。ぐりぐりと私の頭を撫でてくれた。



「ありがとな、桜井」



そんなことを言われたら、もっと泣けてきてしまうよ。

ねえ先生。

どうして私、先生と同い年に生まれてこれなかったんだろう。どうして、先生と同じ街に生まれてこれなかったんだろう。

もし私がそのとき先生の側にいられたら。


そんなの、ただの有難迷惑で、私の自己満足だってわかっているけど。


先生が涙を流す時、ひとりで流させたくなかった。ひとりにさせたくなかった。

ナオの代わりでも、都合の良い女でも、先生の取り巻きAでも、なんでも、なんだってよかった。

先生の側にいてあげたかった。



先生、わたし、先生がすきだよ。

憧れとか恋とか、そんなのどうだっていい。もうなんだっていいよ。

そんなくくりなくったって、この気持ちは変わらいんだよ。

先生がすきだ。すきだからこそ、先生の痛みがとてもよくわかるんだよ。




わたしの頭を撫でて、涙が止まるのを待ってくれる先生が、私のことをトクベツだなんて思ってる訳ないの、ちゃんとわかってるから。

だから、今は、先生の側にいさせてください。

だって先生、言ったよね。
セイシュンは、青いんだって。


それなら、私のセイシュンはきっと先生と一緒だ。


青くてしょっぱくて、きっとこの涙を、この感情を、この想いを、人は青春って呼ぶんだ。