「先生、私見ちゃったんですよ」


結構真面目な声で言ったつもりだったのに、目の前の彼は動揺するどころか動きを一切見せずに「へえ」と呟いた。


「へえ、って……」

「桜井に見られて困ることでもしたかな」

「はあ…?」


明らかにしてたでしょーが。
昼間っから堂々と生徒とキスしてるところ、私バッチリ見ちゃったんだから。誤魔化そうったってそうはいかない。私は先生に向かって牙をむく。


「そーゆーの、よくないんじゃないですか!」

「そーゆーのって、何?」

「えっ?! だ、だから…」

「うん?」


にやにやと笑いだしたから全くもって反省の色が見られない。これが先生とは呆れて物も言えないほどだ。


「生徒とキスとかよくないと思うんです!」
「ぶっ、」


先生____まあ言ってみれば有名チェーン塾の非常勤講師(つまるところアルバイト?)の彼がいよいよ吹き出した。