あの日の帰り道、車の中で翔くん先生とLINEを交換した。なんだか悪いことをしてるみたいでドキドキしたけど、翔くん先生にとったら何でもなさそうでちょっとくやしかった。


『お母さんが夜勤の日は連絡してこい。』


翔くん先生はサラッとそんなことを言ってのけて。私はそれになんでもないみたいに頷いた。

本当は内心、心臓バックバックだったっていうのにね。


あれから数えて、多分今日で7回目。私が先生のLINEにメッセージを送るのは。

『今日、どうですか』

そんな簡素なメッセージに、先生は大抵『いいよ』って短い返事をくれる。たったそれだけのことだけど、私の胸はいつもくすぐったい。


今日が7回目の先生と過ごす夜。土曜日だから、5時に塾は終わったけれど、私は大抵1時間くらい先生を待つ。

ただのアルバイトでも、それなりにやることはあるらしい。

待つ時間は全然苦じゃないからいいんだけれど、先生は毎回走って私の元までやってくる。



「桜井」
「あ、先生。今日は早いですね」



そしてそれは今日も例外でなく。もう7月に入ったからか、駆けてきた先生はちょっとだけ汗をかいている。

……色っぽいってこういうのを言うんだろうな。私は女なのに、絶対先生の方が色気があると思う。