春と言えば何を思い浮かべる? そう聞いて、私はとっさにピンクだとか桜だとか、そんなありきたりのことしか思い浮かばないと思う。
だけどきっと、それだけじゃなくて。
たとえば桜が緑の葉っぱにかわるみたいに。
たとえばヒマワリが太陽の方を向いて咲き誇るみたいに。
———青くて甘い、そんなときを、想いを、青春って呼ぶんだ。
ガチャリと開いた玄関扉。何度も何度も想像して、何度も何度もアルバムの中に見た先生の大切な二人が私に笑顔を向けて、先生に手を差し出した。
「久しぶり」
「「久しぶり!」」
わかりやすい先生の笑顔が、本当の笑顔に見えたから。私は先生の手を握って、握り返された手をさらに強く握り返した。
「———はじめまして!」
【君は、秘密のキスから】Fin.