「ねえ、先生」
私の声と共に黒いスポーツカーがキュッと音を立てて駐車場へと停まる。「ん?」と声だけで返事をする先生の方は見ないで、私は続ける。
「……南緒さんを見ても、浮気、しないでね」
ぎゅっとスカートを握りしめて上を向くと、バックミラー越しに先生と目が合って。
「バーカ。誰がするかよ。そんなに弱い意思なら、そのアルバムお前に見せてないし、第一こんなところに連れてこねーよ」
そう言いながら体を傾けた先生が、助手席まで身を乗り出して私に軽くキスを落とした。
「……おまえが思ってるより、ずっと好きだから。……チカのこと」
———ああ、先生はどこまでもズルいひとだ。