私は目をつむっていたけれど、先生はイキナリのことだったから開けたままだったんだろう。一瞬触れた唇を離して先生を見ると、両目をパチパチと開いたり閉じたりしている。
……ああ、いとしいって、こういうことなんだね。
「先生、誤解だよ。わたし、安藤さんとキスなんてしてない。……今のが、初めて、だよ」
後半、恥ずかしくなって視線をずらす。顔が熱いのが自分でもよくわかる。
初めての、ヘタクソなキス。触れるだけの、一瞬のキス。
「……それ、反則……」
斜め上から聞こえた声。視線を戻すと、赤い顔を隠すように先生が右手で口元を覆っていて。
……なにそれ。反則は先生の方だよ。そんなに可愛い反応するなんて、先生はやっぱりズルい。ズルいよ。
「せ、先生の方が、いろんな子とキス、してるじゃんっ……」
「バカ、俺だって気持ちがあるのとないのとじゃ全然ちげえんだよ」
先生の頬がほんのり赤いまま。ゆっくりと私に近づいてきて、もう一度。不器用に、先生の唇が私のそれに、触れた。