昨日———翔くん先生の部屋で、思わず先生に抱き着いた私を、先生は優しく、それでいて強く抱きしめ返してくれて。
何分そうしていたかなんてわからない。だって私にとったら、夢みたいな時間だったんだ。
好きな人が、自分を抱きしめ返してくれるだなんて。
しばらくしてから、翔くん先生は私を抱きしめる力を少しゆるめて、『……送っていくから、今日は帰れ』って私の目を見てそう言った。
別に全然、期待していたわけじゃない。
期待していたわけじゃないけど、『帰れ』だなんてそんな風に言わなくたっていいのに。
私がむっと口をとがらせると、翔くん先生は困ったように私を引き離した。
『……ごめん、これ以上一緒にいると歯止め効かないかもしれないかもしれないから、今日は帰って』
ドクン、って。
心臓が一回大きく鳴った。恥ずかしくなって私も先生から手を離して。
……先生、それはどういう意味? 先生は思わせぶりなことばかり言うからわからないよ。私みたいな恋愛初心者は、簡単に舞い上がってしまうよ。
そのまま先生の車に乗せられて、家に帰った午後6時。お母さんに塾を休むとは言ったけれど、学校を休んだことがバレているとは思わなかった。