「チカ、昨日学校休んだでしょ」
夕飯を食べ終えて、珍しくデザートにプリンを出してきたと思ったら、お母さんは目を伏せながらそう言った。
テーブルを挟んだ向かい側。たった今スプーンですくったプリンを口に運ぶ手をとめて、口をあんぐりと開けたまま固まる私。
「……気づいてたの?」
「だってチカ、昨日帰ってきたときなんかちょっとおかしかったでしょう? それに、担任の先生から電話があったのよ。チカさんの体調はどうですかーって」
絶対に気づかれたくなかったのに、うちの担任も余計なことをしてくれる。
「……どこに行ってたの?」
お母さんの口調は穏やかだ。いつも通りの優しい表情。目線は伏せたまま、プリンをスプーンですくって口へと運ぶ。
私もつられてプリンを口に放り込むと、甘いシナモンの香りと卵の風味がとろりと口に広がった。おいしい。
目の前のお母さんの背中は、今日も〝ちゃんと〟伸びている。