少しだけ震えた自分の手が、遠慮がちに桜井の手を握り返す。そのまま、頭を桜井の肩へとおろしていって。

ああ、ずっと俺は、このぬくもりを探していたんだとさえ思う。



「……ごめん……」


そんな俺の言葉と共に、桜井が背伸びをして俺の首に腕をまわした。そんな桜井の細い腰を抱いてやると、自分の理性なんて一気に吹っ飛んでいくんじゃないかってほど「離したくない」なんて馬鹿げた感情が頭をめぐって。


 ああ、ごめん。ごめん、桜井。


おまえに後悔してほしくないなんて言って、幸せになってほしいだなんて綺麗事を頭の中で何度も繰り返して、俺、馬鹿だよ。


———後悔してもいい。


例え桜井がこの先俺との時間を後悔しても、それでもいい。もう、なんだっていい。


今、この瞬間、俺は桜井に恋をしていて、どうしようもなく、桜井のことがいとおしいと思う。その気持ちを殺すなんて、もう無理なんだ。



後悔してもいいと思えるほど、今この瞬間、目の前にいる桜井を抱きしめたい。それが俺の、まっさらで無垢な、純粋な感情なんだ。



ああ、俺、やっと。

17歳のあの頃を全部過去にして、今、恋してるって、わかった。