あの日から、週に多くて3日。

俺と桜井は、夜を一緒に過ごすようになった。

夜を一緒に過ごすって言っても、飯を食べに行ったり映画を見たり、そんなフツウのことしかしていないけれど。

桜井は気が利くし、周りの空気を読むのがうまい。あと多分、他人に「迷惑をかける」ということに慣れていない気がする。まあ、中学生っていう思春期に親が離婚して父親がいなくなったというのも原因のひとつなんだろうけど。

そんなに高いものを奢ってやってるわけじゃないのに、いつも申し訳なさそうな顔をする。車に乗せてやる時もそうだ。


女子高生ってこんなもんだっけ。

俺の高校時代、どんなだっけ。


桜井といると、いつもそんなことを思う。まるで自分もあの頃に戻ったみたいに、普段他人には見せないようなところをつい見せてしまったり。


 自分の中ではまあまあ心を開ける友人(たぶん)の安藤から電話がかかってきてそのことを話したら、心底驚かれたのを今でも覚えている。



『まず、お前の口から南緒以外の女子の名前が出てくるとは思わなかった』
『そんなことねえだろ、』
『いや、ある。お前、高校の時同じクラスだった女子の名前言ってみろよ』
『……』
『言えないだろ?』



同じクラスの女子さえ覚えていないことに驚いたけど、それ以上にだったら俺にとって桜井はどういう存在なんだよ、ってそう思った。


恋とか、そんなのじゃない。これはハッキリ言える。
だって、俺は南緒以外に恋なんてできないんだ。
ずっと、ずっと、ずっと、そう思って生きてきたし、今もそう思ってる。馬鹿みたいだけど、物心ついた時からずっと、南緒のことしか考えられなかった。