———『先生は、私の憧れなんです』
初めて桜井チカと食事をした日。星が綺麗だといった桜井に合わせて、夜空を見上げて。何故か俺の最低な部分を話してしまった、そのあとに。
桜井はそう、まっすぐすぎる瞳を俺に向けて言ったんだ。
正直、なに言ってんだコイツとも思ったよ。
ていうか、今まで俺は南緒(ナオ)以外の女子に興味なんてこれっぽっちもなくて、それどころか関りだって持とうとしなかったわけで。
父親がいないと言った桜井を連れだしたのは本当にただの同情心からだった。
それなのに、あいつ———桜井チカは俺の想像を遥かに超えるほど真っすぐな目をして、俺に向ってきた。
『ねえ、先生、その恋にサヨナラしようよ』
若いなあと思うよ。俺もきっとこのくらいの年齢の時、馬鹿みたいに南緒を追いかけていたっけ、なんて胸の奥が熱くなったりして。
……自分でも、なんであんなことを言ったのかいまだにわからない。
『じゃあその夜は、毎回俺と過ごそうか』———と。
ただ、あまりに桜井がまっすぐに俺を見ていて。
あまりにまっすぐな言葉を俺にかけるから。
今までこんなこと、一度だってなかったけれど。
———知りたいと思ってしまった。
南緒以外の女の子を。……桜井チカという人間を。