昔むかしの大昔。

ある山の、深い森にあるひとつの小屋に小さな少年がいたという。とても見窄らしい姿で、毎日毎日本棚の本を読んでいたそう。
長い髪の穂先をくるりと指で巻きながら、とても重たい本を1ページずつ念入りに読む。


「………何故………」


今にも消えてしまいそうな掠れた声で囁く。小さい手で本の文面をなぞり、一文字ずつ目視していく………


「どうしてここから書かれていないんだろう………?」


ゆっくりと、次ページを捲った。


「…………これは」