俺はなるべく優しく声をかける。
「大丈夫、何もしない」
「うーっ」
「怖くねぇから」
「……」
声をかけていくと、次第に威嚇していた声が止まり、睨みつけていた目が俺を観察し始める。
よしよし、順調だ。
怖がっているからというのも勿論あったんだろうけど……俺の読みが当たっていれば、これは多分…。
「その子には何もしない。約束する」
先週、男に襲われた友達を助けるために噛み付いたって、伊織が言っていた。
…まぁ、襲われてもおかしくないくらい美人だもんな、この子。
だからきっと、近づいてくる男を警戒してるんだ。
また同じ目に合わせたくないから、威嚇して噛み付いて追い払ってる。
「怖くない。ほら…おいで?」
「蓮水くん、危ないって…」
「大丈夫だ。噛み付いて来ないはずだから」
「え?」
驚いている友達の後ろから、 ゆっくりと出てきたその子は、俺に近づくとクンクンと匂いを嗅ぎ始める。
…マジで犬か、こいつは。
そうツッコミを入れたくなったのは俺だけじゃないはず。



