「送らねえよ。調子乗んな」


バッサリ切り捨てられてしまった。


「はい、サヨーナラ」


「あっ!待って碧音君」


玄関に踏み止まろうとしたけど、呆気なく碧音君に追い出された。薄情め。


停めてあった自転車に鍵を差し込みロックを解除して、勢いよくペダルを漕ぐ。


空に星は輝いていなくて、ただ果てしなく黒い。今日は体が疲れたというより気疲れしたなあー。


1日一緒に行動した間に、少しずつ分かってきた碧音君と藍さんの、言わば“影”の部分。


ほんのちょっと、垣間見た程度だけれど。


……まあ、人にはそれぞれあるからね。なんて物思いに耽りながら、家を目指したのだった。




――この時、全てにおいて私は、知らな過ぎた。