「あ、ああ碧音君!!」
「ふっ、間抜け顔」
「だって!!」
ああもう、パニック。どうしよう。
「あーあ。俺は完璧に振られたってわけか」
髪をくしゃりと乱して溜め息をつく皐月。私に好きだと真っ直ぐ伝えてくれたあのときを思い出す。
「……皐月、ごめん。気持ちには、やっぱり答えられない。でも……嬉しかった」
「お前が幸せならそれでいい」
そう言ってニカっと笑う皐月は、最高に格好良くて。
「香澄、アメリカ行きの話、ごめん。誘ってくれてありがとう」
「気が変わったらいつでも私のとこに来なさいね。本当はすっごく寂しいけど、碧音が選んだ道なら。応援するわ」
「俺も香澄のこと応援してる」
「言われなくてもプロになってやるわよ」
「ははっ、そうだな」
「これからも碧音は、私の…………、可愛い弟よ」
香澄さんはぽんぽん、碧音君の頭を撫でた。その慈愛に溢れた笑顔といったら。
「じゃあ、私行くわね。皆、元気で。また会いましょう」
香澄さんはそれから一度も振り返らず、颯爽とゲートへ向かっていった。その凛とした姿、素敵です香澄さん。


