「もう一度言うわ。碧音の夢の邪魔を、しないで。碧音の将来を潰さないで。大事に、想っているならね」


言い返せる言葉が、見つからなかった。頭が、真っ白になった。何か言え、反論してやれともう1人の自分が叫ぶ。


けれど言葉は口から出てこなくて。指先が、氷のように冷たい、心臓が痛くて仕方ない。


「碧音にとって何が良いのか。考えて」


幾分か冷静さを取り戻したのか、表情も言葉の端々からも落ち着きが感じられた。方や私は何も言えずにスタジオへ戻っていく香澄さんの後姿を見つめるしか、出来なくて。


碧音君、私は。




――――水の膜が視界を覆って、冷たい何かが頬を滑り落ちた。