「でも」


「碧音、それ以上言わないで」


「……別の相手が気になることなんか、なかったはずなのに」


悲哀に染まっていく香澄の表情、混乱の色で塗りたくられているであろう自分の顔。


香澄の勝気な笑顔も、綺麗でまっすぐ前を向く双眸も、明日歌の表情や言葉で上書きされていく感覚。


糸がぐちゃぐちゃに絡み合って、解けない。


「こんな感情、俺は知らない」


香澄に対しての感情と、明日歌に対しての感情は別物だった。