「でね、このページに載ってるギタリストが私の知り合いなのよ」


「へぇ」


「結構有名な人で、アーティストからラブコールを受けて演奏に加わる、なんてこともあるわ」


「うん」


「ちょっと、聞いてないでしょう」


パタン、雑誌が閉じられた音で思考の海から現実に戻る。


「あー、ギタリストが何だっけ」


「ほらあ。上の空だったじゃない」


「悪かったって」


プクッと頬を膨らませてみせる香澄に謝る。


「なぁーに?ぼうっとしちゃって」


雑誌を本棚に戻して、香澄は大きいソファに座り直す。


今日は皐月達がいない分、香澄の別荘にあるソファはゆったり使える。俺は大きい方のソファは使わないから変わんないけど。


「悩んでるのね」


定位置の1人用ソファに座る俺のもとへ猫のようにしなやかな動きで近づいてきた。



「――私と一緒に、アメリカに行くのかどうかってこと」