「碧音君、毎回送ってくれなくてもいいんだよ」


香澄さんの家を早々に出ていった私を、碧音君は追いかけてきてくれた。それはあの、帰ってきた香澄さんと公園で集まったときも同じで。


「夕方だから」


「今日は苦手な夕日じゃないしさ」


「素直に送られとけば」


碧音君は、夕方が苦手だと言った私のためにこうして一緒に帰ってくれる。でも、碧音君、本当はまだ香澄さんといたかったんじゃない?


家に残って、2人でたくさんお話したかったんじゃないの?


私のこと、放っておいてくれて構わないのに。―――なんて、自分の本心を隠す建前としてバカなことを考えてしまう。


だって実際は、香澄さんよりも自分を優先してくれたことに嬉しいって思ってる。


私も、少しは気にかけてもらえているのかと安心してる。碧音君は純粋な優しさで行動してくれてるのに、それに対して私はこんな汚い感情を持て余すしかないなんて。


今の自分がなんだか情けなくて、下を向いて歩く。アスファルトを眺め続けていたって、何も生産性はないんだけどね。


気を利かせて何か話題を振らなきゃとは思うけれどどうにもそんな気はしないし、たとえ話題を出したところで会話を長く続ける自信がない。


ダメだ、どんどん嫌な方向に感情が引っ張られている。