荷物を持ってぞろぞろと玄関に向かう。シューズボックスの上には、俺達と香澄で撮った写真が飾られてある。若いな。


「碧音はまだ残っていくでしょ?」


「今日はいい。明日歌送ってくから」


「……、そう。気をつけて帰りなさいね」


「またな、香澄」


俺達よりも足早に外に出ていく明日歌ちゃんを追いかけていった碧音に、香澄はつまらなそうな顔をする。


「碧音、変わったわね」


「変わったって?」


「昔ならいつまでもこの部屋に入り浸ってたし、誰かのために私の誘いを断ることはなかったじゃない。それなのに、たかが相手を家まで送るために断ったのよ?」


すっと目を細め表情を変える香澄。碧音のここ数カ月の様子を知らない香澄からすれば、信じられないよね。


「俺もあいつのことだから、まだ帰らないと思ってたんすけど(だから俺が送ろうとしたってのに!)」


「皐月もそう思うでしょ?……妬けるわね」


香澄の瞳の奥で、何かがギラついた。


「片瀬、今へんなこと考えたでしょ?」


「考えてないわよ」


「ふーん?ならいいけどさ」


星渚が探りを入れるような目で香澄を見る。今の言葉は星渚なりに釘を刺したんだ。俺も何か言おうと思ってたけど、今ので十分だろうと思い止めておく。


―――恋のもつれは、これからどうなっていくのか。今は、見守るしかない。