「さぁ、入って入って」


「おっじゃましまーす!」


片瀬に案内されたのは、昔俺達もよく遊びに来ていたいわば彼女の秘密基地みたいな離れ。


部屋は2つに区切られていて、音楽に没頭できるスタジオのようなスペースと寛げるスペースになっている。いいよねー、こんな部屋があるなんてさ。


「家具も内装も昔のままだ。このくまの縫いぐるみまでとってあったんだな」


藍が頬を緩めながらソファに置いてある色褪せた縫いぐるみを手に取る。


「それはどうしても捨てられなかったの。あまりに可愛くて」


「あ、そこにあるCDラックって」


1人がけのソファに身を沈めていた刹那がちょうど視線の先にあるチェストの上に乗っているCDラックを指差した。


「ふふっ、懐かしいでしょ。碧音が私の誕生日にくれたCDラック。すっごくお洒落だからこれからも買い替えずに使っていくつもり」


香澄が刹那の座っているソファの肘掛の部分に腰を下ろして、くすりと笑う。そういえば、昔も2人はよく今みたいなソファの座り方をしていた。


たまに刹那が座ってるソファの隙間に無理矢理片瀬も座ろうとして、じゃれ合ってたっけ。