「片瀬がLIGHTを辞めてバンドを解散したとしても、他のバンドと組んでライブできたはずなのに何でそうしなかった?」


「……他のバンドじゃ、ダメなんだ。LIGHTのボーカルだったからこそ、私は楽しめてたから。まぁバンドを辞めたおかげで音楽を聴く側としての楽しみや喜びを知れたからよかったと思ってる」


「明日歌、変わったわね」


香澄さんか意外だったと言わんばかりの顔をする。


「はい。私も、昔と同じままじゃありません」


なんて、少し大人ぶった台詞を言ってみたりして。


「はぁー。香澄さんがこんな突然帰ってくるとは思わなかったし、明日歌は人気のバンドだったボーカルだったとかいう衝撃的な事実知らされるしで俺頭パンクしそうっすよ」


「それもそうよね。私、あと2週間はこっちにいる予定だから、ゆっくり色んな話しましょ」


すくっと立ち上がりぐーっと背筋を伸ばす。黒髪をかき上げて、口元に弧を描いた。


「またよろしくね、皆」


さわさわと吹く涼風が香澄さんの黒髪を攫っていく瞬間、彼女の耳元で夕日を反射してキラキラ光るものに目が留まる。


―――私の勘違いじゃなければ、その片方しかしていないピアスは。


碧音君が大きなライブの時に必ずしているピアスと、同じじゃないか。



その青い光がやけに眩しくて、目を逸らした。