キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】





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「こ、ここが碧音君の家!」


スタイリッシュでモダンな家に足を踏み入れる。


みっちりリハーサルスタジオで練習した後、予定通り碧音君の家へ来た。


どうやら碧音君のお父さんが音楽関係の人で地下にスタジオほどではないものの本格的な練習室があるらしい。



「碧音、今年は叔母さん達どこ行ってんだよ?」


「グアム」


「グアム?去年も行ったじゃん」


「前に聞いたら叔母さんも叔父さんも、グアムが気に入ったんだってさ~」


玄関で繰り広げられる皆の会話についていけない。


グアムがどうしたって?


「あの、何の話ですか?」


「ああ、刹那の両親は毎年どっかに旅行すんの。忙しい人達だから時期はバラバラなんだけどさ。で、ちょうど2人が居ない間に俺らが自由にここを使わせてもらえる」


「叔母さん達にとっちゃ、家を留守にすると色々心配だろ?でも俺達が居るからその必要はねえっつーこと」


成るほど、お互いの利益が一致してるんだね。


もしかしたら、碧音君を1人にさせるのも心配してるのかな、なんて思うと微笑ましくなった。


料理出来なさそうだし、碧音君。というか、男子高校生で料理できる方が珍しいか。


「うおー、喉渇いた。やべえ、水飲みてえ」


我が物顔でリビングにドカドカ入っていく皐月に、遠慮というものを教えてあげたい。


「橘」


「あ、うん」


こっちに着いてこいと碧音君に目配せされ、皆の後を追う。


リビングは対面式キッチン、透明なガラステーブルに椅子、お洒落なインテリアの照明と、モデルルームさながらの内装。


そこに、冷蔵庫にはプリントがマグネットで張ってあったり適当に積み上げられた本があったりして生活感が出ている。


「冷蔵庫の材料とさっき買ったやつ使って」


「うん、分かった」


肉と魚と野菜、一通りあるからと冷蔵庫の中身を確認する碧音君。


皐月は椅子に座り水をガブガブ飲んで渇いた喉を潤し、星渚さんはスマホを弄っていて、藍さんは雑誌を手に取り読んでいる。


皆、寛ぎモードの様子。


私はこの間に夕飯の下準備をしてしまおうと、早速料理に取りかかった。


これまたデザイン性の高い冷蔵庫からベーコン、卵、チーズを取り出しまな板の上で始めにベーコンを短冊切り。生クリームもあったから、手作りカルボナーラはばっちり作れる。


誰かの家で手料理を作るのは初めてだなあ、変に緊張してきた。


しかも、碧音君の家のキッチンで、だ。


ベーコンを熱したフライパンで炒める間、何気なく皆がどうしてるのか気になって、様子を窺う。


「皐月、退け」


「俺は今、体で風を受け止めるのに必死なんだよ」


「扇風機に当たってるだけだろ。退け」


「碧音、俺が暑いの苦手だって知ってんじゃんよー。うっわ、まじで熱中症かも」


皐月と碧音君は、どちらが扇風機の冷たく気持ち良い風に当たるかでケンカ中。