「今回も練習、お疲れ様!」


スタジオの練習室から出てきた皆にタオルやドリンクを手渡す。


「今回俺ら調子よくね?いい感じに仕上がってきてるしさ」


ほくほくした笑顔で皐月が声を弾ませる。上機嫌だな。


「次のライブまで余裕持って完成させられるかも。藍もそう思わない?」


「このままいけば、な」


タオルで顔や首筋を拭きつつ藍が『皐月は調子に乗り過ぎないように』と釘を刺すと、皐月は『そんなこと分かってるし』若干目を泳がせた。


その様子を見て星渚と碧音君がくすりと笑う。


―――あの日、碧音君と2人で家に戻ると帰った時間も遅かったせいか3人に大丈夫かとすごく心配されて。


特に皐月は自分のせいで碧音君が嫌な思いをして外に飛び出していったと考えていたから、余計心配していた。


けど私が『碧音君と、話をしてました。もう大丈夫です』そう言うと皆安堵の溜め息をこぼし、何があったかについては深く追及してこなかった。


きっと、碧音君のどこかすっきりした表情と少し赤くなった目元を見て色々と察してくれたからだと思う。


「藍はこの後どうすんの?真っ直ぐ家に帰んの?」