「俺の本当のお父さんとお母さんは、別にいる。今一緒に暮らしてる両親は、本物の親じゃ……ない」


それがどういう意味か理解するのに、通常の何倍もの時間を要した。


片方の親だけではなく両方とも自分を産んでくれた親ではないということは、離婚ではないはず。


「前に、お前家来たとき、写真見ただろ」


「見た」


夏のライブのための合宿で碧音君の家にお邪魔した際、飾られていた写真立ての中にいたのは小さな碧音君とお母さん、お父さんの3人。


「気づいたんだよな?あの時。……目の色が、違うって」


「両親は黒色なのに碧音君はそうじゃなかったから、不思議に思ってた」


パッと見ただけじゃ分からないけれど、よくよく注意して見れば瞳の色が異なっていたのだ。


普通、親が2人共黒目ならばその子供が別の瞳の色になることは有り得ないと言っても過言ではないと、テレビか雑誌で知っていたから尚更違和感が胸を突っかえていて。


碧音君に疑問を投げかけようとしたけれど、写真を伏せられてしまったから“聞くな”の合図だと思って止めておいた。


「鏡とかでこの目を見る度、ああ俺はあいつらの子供なんだって思って嫌になる」


忌々しそうに、片目を手の平で覆った。