「でも、皐月が許したんだし問題は解決したんだよ?」


「違う」


「え?」


他に理由があるらしい。嫌悪で濃く塗りたくられた瞳を細め、顔を歪ませる。


「あいつが、皐月を否定したから」


「皐月、を?」


そう言われてみれば碧音君は浅野さんに掴みかかった時『お前に皐月を否定する権利はない』と声を荒げていた。


「皐月は優しいやつだからあいつを許した。でも、俺は絶対許さない」


皐月が根は優しいことは、私も十分知っている。相手を見捨てないのだ、皐月は。


「自分を否定されることがどんなに痛いか分かってないからあんなこと言えるんだよ。そういうことを躊躇なく言えるやつなんか、消えればいい」


怒りと嫌悪で震える、碧音君の握り締めた拳。


内で燃えたぎる感情をどこへぶつければいいのか分からない様子で、下唇を噛む。


「でも、浅野さんだって長い間悩み続けてた部分もあるだろうし。結果その気持ちがああいう言葉になっちゃったんだと思う」


「お前もあいつと同じ?人に否定されたことがないからそんなことが言えるんだ」


碧音君は恐らく自分と皐月を重ね合わせていたのだ、あの時。