――――それから数日後。


星渚さん達の図らいで週2日程行われるバンドの練習に来てもいいと言われ、見学させてもらえることになった。


学校以外で碧音君に会うのはライブ以来。


利用している人はリハーサルスタジオを使ったり隣にガラス張りの壁で隔てた多目的室で休憩なり何なりしている。


機材が本格的で設備もしっかりしている綺麗なこの場所の経営者が藍さんのお父さんというから、驚きだ。


だからスタジオの利用料金も大分安く済んでいるとのこと。


「碧音君暑かったら服脱いじゃってもいいんだよ?」


「暑さでついに思考回路停止した?」


えー折角碧音君の上半身見られると思ったのに、残念。


特に腰とか腰とか腰とか!その絶対領域をこの目で拝みたい。絶対領域から溢れるフェロモンを感じたい。


「碧音君の生着替えを見れたら思考回路も正常に復活すると思う」


「代わりに星渚の見れば」


「俺を犠牲にしないの~」


「私が星渚さんの上半身見たら菜流に怒られます」


その菜流は練習には来ていない。星渚さんの気が散るからだ、と藍さんが教えてくれた。


「つーか、腹減った!」


「今から昼飯の買い出し行くやつ決めるからねぇ」


「え、皆さんまだ食べてなかったんですか?」


星渚さんの言葉に被せる勢いで言ってしまう。


部屋の時計が指し示す時刻は、13時45分。私がここへ来たのは、昼ごはんを食べ終えた後でちょうど13時だった。


「きりのいいとこまで、練習進めたかったからさ」


藍さんがブラックの缶コーヒーに口をつけ、足を組み変える様はまさしく大人って感じ。


「変態女、お前も参加な?」


「わ、私も?」


「俺らの素晴らしい演奏を聞かせてやってんだから、それくらいしろっつーの」


「自分が負ける確率低くしたいだけですよね」


分かりやすいな高瀬さん。冷ややかな目線を送る。


「負けた奴2人が買い出し。いくよー」


「絶対負けねえ!」


高瀬さんはよくわからない気合のいれ方をしていて。そんなに本気か。


「じゃーん、けーん、ぽん」


各々が出した手の形は。