私が止めても相手にしてくれないし、星渚さんは端から止める気もなく放っておく。


「あ、でも急がなくて大丈夫だよ。波江さんの傍にいてあげて」


波江さんの不安は、私には計り知れない。


「そうさせてもらう。じゃあ、またね」


「うん。また」


去っていく藍の背中が、大きく見えた。藍は強い。私も、藍くらい強くなりたい。


ブー、ブー、ブー!


小さくなっていく姿を見ていたら、携帯が震動した。


「もしもし」


『おいお前、今どこにいんだよ!!』


電話越しから聞こえる皐月の怒った声。や、やばい。これはやばいブチギレしていらっしゃる。


「せ、星渚さんに教えられた川岸にいる」


『スタジオ出てからどんだけ時間経ったと思ってんだ!もしかして藍に会えなかったのか?』