お父さんがいるはずなら、車が留まっているのにそれがない。お父さんはまだ帰ってきていないのか。でも、家にはお母さんと結人がいる。
焦る気持ちを抑えリビングに入ると―――いたのは結人、だけ。
「結人、お母さんは?」
聞けば、言いにくそうにキョロキョロ視線を泳がせて小さく口を開いた。
「お母さんは友達とご飯食べに行くって言ってた。お父さんは飲み会だからって……」
―――ドシャリ。
スルスルとケーキの箱を入れた袋が指から滑り落ち、鈍い音をたてて床に崩れた。
「……、なんだよ」
重みのなくなった手が虚しい。現実が、嫌という程身に染みる。静かなリビングをグルリと見回す。
切なくなった、優希の家と違い過ぎて。
暖かいあの家とは温度差があって。


