キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】



優希のお父さんに会うのはこれが初めて。温厚そうな人だ。俺のお父さんは寡黙で無駄なことは話さない。


「いっただきます!」


「優希、口に頬張り過ぎ」


お母さんに苦笑いで注意されても優希は大口で食べ進めていく。よく噛んで食えよ。お前のは飲んでるって言うんだよ。


「牧田君、美味しいかしら?」


「すごく美味しいです。俺、オムライス好きで」


「あら、良かったわ。お腹いっぱい食べなさいね」


「頂きます」


家族揃って食事。ニコニコ笑って今日はこういうことがあっただとかテレビ番組がどうとか話し合っていて、会話が途切れない。


暖かくていいな。飯がもっと美味しく思える。


……家族で何か一緒のことをして楽しんだ経験は、いつが最後だったんだろうか。最後になってしまったのは、何年前だろ。


思い返すのも、億劫だけどね。