「あー、おっかし」


「そんなに笑わなくても」


「発想が面白い」


褒めてるのか貶してるのか、どっちだ。藍は一頻り笑った後目尻を指で拭った。


「……電柱のフリじゃなくて、人形のフリして」


「え?」


「早くフリしてくれないと、俺が話せないよ」


藍は打ち明けてくれるみたいだ、理由を。一緒に考えて答えを出す許可を出してくれたのだ。それならばと姿勢を正して目を瞑る。


「俺、さ。実は――――……」


藍が初めて自分を語ってくれたのは、夏から秋に変わろうとする風が吹く、そんな午後のことだった。