「ふんふん、ふっ~ん」


鼻歌を歌い、軽快にスタジオへの道を歩く。


鼻歌と共にリズムを刻み揺れるのは、手作りプリンを入れたバッグ。


勿論保冷剤も準備してあるから、生温いプリンになることはまずない。


カラメルソースは大人な味でほろ苦くしてあるし、しつこくない甘さだから皆に食べてもらえるはず。


碧音君の胃袋掴めるかも、なんて想像してる内にスタジオへ到着。


私は練習室には入らないし、楽器や機材を借りるわけでもないからスタジオの利用料金などは払わなくても良いので、受付けのスタッフに挨拶してそのまま通り過ぎ休憩室へ向かおうとした途中。


「あ、藍。今って休憩時間な、の――」


「……」


聞こえる音量で話したのに、藍は私に顔も向けずスッと横を通り抜けていった。