「でね、サビに入る前に星渚がウィンクしてくれたのがめっちゃくちゃ格好よくてね」


「うんうん分かる分かる」


ライブが終わって休み明け月曜に学校に来た途端菜流からいかに星渚さんが超絶自慢できるお兄さんかをひたすら聞かされ、このウィンクの話だって昨日を含め4回はされている。


「あのタイミングでウィンクはずるいよ、誰だって惚れちゃうって」


「ねー惚れちゃうね」


「ちゃんと聞いてよ明日歌!」


「聞いてるから次の教室行こうね」


4限目は移動教室だから早めに行動しないといけないのに菜流は話に夢中だから自分の分と菜流の分両方の教科書とノートを持ってクラスを出る。


「菜流ちゃんと前見て歩こうか」


「やっぱ家で練習してる姿もいいけどああやってステージでドラム叩いてる姿が一番好きだな」


両頬をに手をあててとろけそうな声で言う。ダメだこりゃ、次の授業も集中できないんだろうな、と苦笑いしつつ廊下を歩いていると。


「……ん?!」


「うわっいきなり何よ明日歌」


思わず素っ頓狂な声を出してしまったけど仕方ないじゃないか。だって、目の前には。


「見てあれ碧音君!いた!」


「どこ?……あ、ほんとだ」


数メートル先に廊下で友達とお話中の碧音君が、あの碧音君が本当に自分と同じ制服を着てそこにいるのだ。