「まただ」


ガラス張りの休憩室の窓から、受付けの辺りで壁に寄りかかっている彼を発見。


携帯を耳にあて真剣に話し込んでいるその姿を目にするのは今日に始まったことじゃない、というか最近ずっとこの調子なのだ。


たまにクシャリ、緩いウェーブのかかったマロンブラウンの髪を乱して肩を落とす。


練習の合間にある休憩の時間になると、決まって離れた場所で携帯を弄り電話していて。


心配だ、声をかけてみようかと休憩室のドアを開けるために立ち上がったら――ガシッ!


「はいはい、お前は俺と曲のチェックしましょうねー」


「皐月!」


腕を掴まれろくに抵抗も出来ず皐月の隣に座らされた。尚も腕は離してくれない。


「私、ちょっと用事あるから」


「お前の用事よりこっちの方が大事に決まってんじゃねえか」


小型の録音機器を揺らして見せつけてくる。


前の合宿の際私が練習の時に出したアイデアが採用されたこともあり、少しではあるが曲作りに参加させてもらえている。