予想通り満員の箱に押し込まれながら、はあ、と小さく溜め息を吐く。あれは、失敗した。


相談中、こいつ碧音君がー、碧音君はーってずっと言ってるから何となく面白くなくて。


だから意地の悪い質問をしてしまった。案の定、シュンとした顔になりながらも強がってたけど。


途中から軌道修正しようとこじつけで『突っ走るだけじゃなくて立ち止まれ』だとか言ってみたりして。


無理あるかって若干心配したけどあいつは信じきってくれた。まじで単純だわ。


「なあお前、棒になる練習でもしてんの?」


「棒を目指す人間はいません」


隣でギュッと体をコンパクトにしようと頑張ってる明日歌。一体何なんだと不思議に思い周りをチラリと見回して。


「……あー」


明日歌を挟んだ左隣に、小さい子供がいたのだ。子供のためにスペースを開けてやろうとしていたのか。


満員電車では危ないから、と。はー、お前は。


「明日歌」


「はい?」