さも当たり前のように言ってのけた後、皐月は『俺としては』とつけ足す。


「お前が彼女とか不服だけどな」


「その言葉、そっくりそのまま返す!皐月が彼氏?冗談」


わざと鼻で笑ってやったら、皐月に思い切り鼻をつままれた。


「年上にそんな態度で良いのか?ん?」


「調子に乗りまじだ」


妙な鼻声になりながらも反省の言葉を述べると、パッと離してくれた。自分の鼻をさすって労る。伸びちゃうでしょ!


「とにかく、ちゃんと付き合ってるフリしろよな!」


「フリって必要ある?」


「一応な。店員に疑われて冷めた目で見られたくないじゃん?」


「うん、実際偽カップルだけどね」


「細かいことは気にすんな!ほら、行くからチャッチャと歩け」


この後用事があるわけでもないし、別に良いかと皐月とカフェへ歩みを進めたのだった。




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そして今に至る。


「で?私を誘った理由は別にあるんだよね?」


抹茶ラテに口をつける。


「は、別に、俺は」


「またまたぁ。分かるよ、それくらい」


女の勘をなめちゃいけません。犯人を問い詰める刑事の如く、ズイッと身をのり出し『当たりでしょ?』と再度聞く。


「……そうだよ。お前に聞きたいことがある。外で話すのは暑いし怠いだろ?それに、あいつらがいるとこで言うのも何だと思って」


皐月がストローでブロックの氷を突つけば、ガラリと音をたてて底に沈む。


「んじゃ遠慮なく聞くけど。お前さあ、何気にしてんの?何で悩んでんの?」


皐月の、力強い眼光。


「悩み?」


「ライブ終わってから、俺らの練習見に来ても妙に静かじゃん。いつもみてぇに騒がないし」


立場逆転。今度は私が皐月に問い詰められる番だ。


「それは、碧音君の一層レベルアップしたギターの技術や真剣に打ち込んでる姿にうっとり見とれてたから。暑くなってTシャツパタパタしたときに程よく鍛えられた腹筋が見えちゃってもう悶えて声が出せなかったというか!」