「うはっ!これだよこれ。俺が飲みたかったの」


透明なプラスチックの蓋付きカップに入ったブラックコーヒーを、皐月が指差す。表面についた水滴が、ツーとカップを伝い滴り落ちる。


「皐月がブラック飲めるって、意外だなっていつも思う」


「俺、大人だからなー。子供舌じゃねえからな」


キメ顔で軽口を叩く皐月にイラっとして、足をテーブルの下で軽く踏んづけてやった。


そしたら無言で私の飲み物に横に置いてある小瓶の中の砂糖をぶち込んでこようとしたから『ごめんなさい!』と全力で謝る。


「お前の、何味っつったっけ?」


「抹茶チョコアイスラテクリーム乗せ、更にトッピングに抹茶フレーク」


「なげえ!つか、奢りだからって高いの選びやがって」


「ご馳走さまでーす」


「可愛い子ぶるなガキ」


何故、私と皐月が2人でお洒落なカフェにいるのか。


それは、数十分前に遡る。


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「藍、星渚さんお疲れ様でした!」


スタジオの外に出て、練習を終えた2人に手を振った。