midnightというバンド名を体現するかのような夜の闇に紛れ込める黒い服に身に纏い、ネクタイには細い1本の線が入っている。
碧音君は紺色で皐月は臙脂色、藍は藤色、星渚さんは黄色。
4人共普段よりお洒落なアレンジの髪型にしていて、どこぞのモデルですかと聞きたくなる。
皆で観客を煽り盛り上げて定位置につくと、少しだけざわめきが収まった。碧音君が3人に目配せして、星渚さんがカンカンカン、スティックを叩く。
皐月のベースと藍のギター、それに合わさる複雑なリズムを正確に叩く星渚さんのドラム。
マイクからスッと視線を上げ、形の良い唇を開けて紡ぎ出される言の葉。
「――Hold my breath――」
たった一言碧音君が口にすれば、たちまちmidnightの世界に支配される。観客も、声にならない叫びを上げているはずだ。
「――I just want you look at me alone――」
体の奥の奥にまで響く力強い、それでいて溢れんばかりの色気をのせた歌声。
けどたまに爽やかなライムや甘ったるい蜂蜜を加えたような歌い方もするから聞いていて飽きない。


