キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】





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念入りに楽器の音をチェックし、集中力を高める。いつも通りの音と寸分も狂わないように。


「皐月、緊張してる?」


「緊張なんかしねえよ。むしろ早くやりてえ」


今更不安になってきただとか心配だとか、言うわけねえだろ俺が。逆だっつーの。


「それでこそ皐月ー!やる気が空回りってこともないか」


「ふふ、それはないだろ。ね、皐月」


藍が俺の隣りのパイプ椅子に座り、口角を上げる。


「あったりまえだろーが。集中してたんだよ、集中」


藍も、ライブ数分前だというのに緊張した様子もなく落ち着いて構えていて。


「おい星渚、…………って、何笑ってんだよ?」


控え室の壁に凭れかかり、にやついた口元を手で覆う星渚。


「いやぁ、ほんと菜流可愛い。見てこれ」


「は?」


星渚にズイッと携帯の画面をつき出された。何なんだよ、仕方なく画面を見る。


「『星渚、私ステージの前の方の真ん中にいるからね』?」


読み上げた文章と共に送られてきていたのは、投げキッスにウィンクした菜流の画像。