「まぁ俺の超絶うまいベース聞いたらファンになるよな」


「違います私が心を奪われたのはっ…………あなたです!」


体を向けた相手は、勿論刹那君。ああ、近くで見ると尚端正な顔立ちだと分かる。


「俺スルーかよ」


「皐月どんまい」


高瀬さんの肩を、くすくす笑い叩く藍さん。


「刹那君……いいえ碧音君!」


「え」


怪訝な顔をされても、大して気にしないめげない私メンタル丈夫。


「あの、碧音君の歌大好きです!惚れました、ぞっこんです!心臓ぶち抜かれましたいや声だけじゃなくてあふれんばかりの色気にノックアウトされたんですけど……ってすみません本音が」


「くたばれ痴女」


「その冷たい視線すらご褒美に思えてしまいます」


本当に同い年なのか?高校生なのか?


「お前碧音に対してよく堂々と言えるな変態発言」


「高瀬さん、決して変態ではないです」


念押しするけど、高瀬さんの顔は引きつっている。藍さんは至って普通なのに。


「残念だが世の中ではお前みたいなのを変態と呼ぶ。心の声を抑えろ」


「皐月の言う通り。なんなのあんた」


あり得ねえ、呟いて碧音君は柔らかそうな黒髪を右耳に掛けた。


「ぐはっ………!!」