藍さんは物腰柔くて、話しかけやすい。
視界の端で我関せずな兄妹2人がイチャついてるけど、誰も突っ込まないので放っておこう。
「私、今日初めて皆さんのライブ観てファンになりました!曲のアレンジも、原曲の良さは残しつつ音程やリズムを変則的に変えてるとことか、ビビッときました!」
「原曲知ってんのかお前?!」
「はい。liquidですよね?」
高瀬さんが目を見開き、声を弾ませる。
「マイナーだから知ってる奴あんまいねぇと思ってたわ」
「好きなんです」
自分の好きな曲が演奏されたら、テンション上がらずにはいられなかったよね。私もつい、興奮して前のめりになってしまう。
「本当に、心をガシッと掴まれました!」
「褒められると、照れるな」
少しはにかみ頬を緩ませる藍さん。しかし。
「ねぇ星渚帰りハンバーガー食べて帰ろうよー」
「夜にそういうの食うと太るのに」
「えぇー……」
「嘘、冗談。太っても菜流は可愛い」
待って待ってマジで何なのあなた達は!
いや、いいよ。兄妹仲良くていいですけどね?藍さんが醸し出す穏やかな空気ぶち壊しだ。
てか絶対話聞いてないだろ。聞いてないよね。


